その37 回りに気付かれない地道な先手準備をやっている部下を評価しよう!

こうして真の勝ち方には、名誉も功績も与えられません。しかし「勝利を確保するのに、既に敗れている相手に勝っているから」誤りがありません。「戦いの上手な人は、不敗の地に立ち」、敵が敗北へ向かうよう常に努めているのです。

結論を言えば「勝利する軍隊は、あらかじめ勝っておいてから戦いを起こし、敗北する軍隊は、まず戦いを起こしてから勝利を求めていく」ということになります。

では、あらかじめ勝っておくためには、一体何をすればいいでしょうか。敵味方の力量を冷静に把握しておくのは、記述の通り当然のこととして、何よりも普段から全体を観る目(全体観)を養っておくことが肝腎です。人より一段高い所に立って大局を見渡し、自軍の問題箇所や「虚」にあたる弱点、相手の意図と狙い、敵陣営の指導者の実像(経歴や実績、性格や弱みなど)、それに対して誰を味方の将軍に就けるか等を考えておくのです。

それから、流れを読むことが重要です。世界の一切が動いており、陰極まれば陽に転じ、陽極まれば陰に転じます。少し長い目で見れば、この世は無常であり、固定などしていないということがよく分かります。

そこで見通しとして、このまま上がるのか、それとも下がるのか。そろそろ天井に当たって下降に転じるのか、あるいは底を打って上昇に転じるのかと。それらは、流れがあるということを前提に、私心を挟まないで考慮すれば観えてくるものです。

全体を観、核心となる状況を把握し、流れを読む。それらを踏まえての努力が、あらかじめ勝っておくための先手準備となります。いち早く問題に気付き、素早く為すべきを為しておくのです。

ところが、その手際よさを認識してくれるのは、一部の識見の高い指導的上役に限られます。多くの人たちは、それくらいなら誰でも出来るだろうと思っているのです。

本当に評価すべき部下とは、ファインプレーをやって人気者になっていく輩だけではありません。既に深刻化した問題を、ヒーローとなって鮮やかに解決していく者ばかりでもありません。

それらよりも、素人には気付かれない用意周到な先手準備をあらかじめやっておき、端(はた)からは何もしないで上手くやった幸運者と思われるような人物が、一番誉め称えるべき部下なのです。

なお、アメリカ大リーグのイチロー選手は、その見えないファインプレーをやりつつ、捕球時にはスライディングキャッチをやって拍手喝采を浴びることの出来る選手でした。イチロー選手は、さらに上をいっていたのです。

それから、日本を侵略しようとする国家は、あらかじめ勝っておく状況をつくるため、既にいろいろな手段を講じていると思っておくべきです。外交戦、宣伝戦、情報戦、経済戦その他、あらゆる先手準備を施していると。もしも戦闘になったときは、もはや決着は付いているという悲観を元に、そうならないよう先手準備を施しておかねばなりません。(続く)