その39 兵法が示す、勝利のための5つのはかり

前線で奮戦し、戦闘で勝ったとしても、本国の政治が悪ければ折角の勝利も水の泡と化します。華々しく戦う将軍の人望が高まり、国民から英雄視された場合、本国の大臣たちが嫉妬して、必要な武器や物資・食糧の輸送を止めてしまうといったことも起こり得ます。味方に足を引っ張られ、酷ければ殺されてしまうことすらあるのですから、将軍は本当に大変です。

そうした指導体制の乱れが生じないよう、まず政治や経済などの「政道を修め」、部隊が安心して戦える状況を作らねばなりません。体制が一丸となれば、将軍は前だけを向いて、戦地の軍制や法令などの「軍法を保つ」ことが可能となります。大局(政道)と中局(軍法)がよく繋がってこそ、「しっかりと勝敗の態勢を整えていく」ことが出来るというわけです。

この言葉に続き、孫子は「兵法(の要素)」として、「第一に度(たく)」、「第二に量」、「第三に数」、「第四に称(しょう)」、「第五に勝(しょう)」があると唱えます。これらの漢字には、キーワードとしての意味があります。

「度」には、物差しで測るという意味があります。国土の面積、敵地への距離、戦場の広さなどの広狭・長短を度(はか)ります。

「量」には、升目で量るという意味があります。確保出来る資源・食糧の量や、戦地に投入可能な物量などを量ります。

「計」には、数え計るという意味があります。人口の多少を計算し、動員出来る兵数を明らかにします。

「称」には、はかりで量る、比べはかる、それから誉め称えるという意味があります。敵味方の戦力と攻撃能力を比べはかり、誉め称えられるくらい自軍が充実しているかどうかを問います。

「勝」には、勝つという意味と、優れているという意味があります。第一から第四の内容を考えながら、勝利をはかります。

こうして国土や戦場をはかり、資源や物量をはかり、人口や兵数をはかり、戦力や攻撃能力をはかり、勝利をはかっていくのです。(続く)