その46 奇を以て虚をつく!長州藩士・高杉晋作の活躍

孫子は「およそ戦闘というものは、正法で合戦し、奇法で勝つことになる」と述べました。先に解説した通り、正法は正規軍による定石通りの攻撃法、奇法は敵の虚である搦め手や側面を攻める方法のことです。

定石に則る正法は戦い方の基本なのですが、ともすれば教科書通りの運用となりがちです。現実においては、戦い毎に状況が異なります。似ている戦闘はあっても、全く同じ戦いというものはありません。

ですから、常に状況の変化を読み取りながら、大きくは正法を基本としつつも、現場では奇法を存分に用いることで、個々に勝利を積み重ねていけるよう留意せねばなりません。地道に小さな勝利を積み重ねていくことで、結果として大きな勝利を成し遂げよというわけで、そういう「積小為大」にも孫子の意図があるはずです。

幕末の長州藩士・高杉晋作は、「奇を以て虚を突つき敵を制する」ことを目的に「奇兵隊(長州藩諸隊)」を結成しました。奇兵隊は、藩の正規軍とは別個の志願制の義勇軍です。武士だけでなく農民・町人・神官・僧侶・力士などによって結成された、まさに特殊編成の遊撃隊でした。

この奇兵隊と正規軍の組み合わせに、さらに天才的軍略家である大村益次郎の活躍が加わって、四面楚歌に陥っていた長州藩は、見事に幕府軍を撃退することが出来たのです。高杉晋作は、さらに海軍総督として軍艦「丙寅丸」に乗船し、幕府艦隊に夜襲を仕掛けるなどして活躍しました。

正法によって準備を整え、奇法を有効に用いる。大局的に盤石な基盤を築いた上で、現場では状況に即して対応する。そうして必勝の態勢を維持しつつ、勝ち易きに勝っていく。この在り方は、経営にも置き換えられます。原理原則に基づいた正法で基盤を整え、現実場面では奇法を存分に使って臨機即応に動くのです。(続く)