その49 攻撃ポイントへの一点集中が加われば、威力は格段に増す!

激しい水流が岩石を動かすのが「勢い」であり、鷹や鷲など猛禽類が獲物を捕らえる一瞬が「節目」であることを述べました。孫子は「勢い」と「節目」について、さらに次のように説明していきます。

「戦いの上手な者は、その勢いを険しくし、節目を一瞬に集中させる」が、「勢いは石弓を張るときのようなものであり、節目はその引き金を引くときのようなものである」と。

「石弓」は発射装置のある強力な弓のことで、ライフル銃のように構えて矢を射ます。そこに張られた弓弦(ゆみづる・ゆづる)の弾力が、矢の「勢い」の元になります。

そして石弓の引き金を引く瞬間が、チャンスとしての「節目」です。節目には時間的な意味と空間的な意味があり、時間の一点と空間の一点の両方を重ね合わせるよう集中させねばなりません。間合い(空間)を計りながら、流れ(時間)を読んでいくのです。まさにチャンスとは、時空同時に生ずる一瞬の区切りのことであり、そこに節目の本質があるのです。

この「節目」を捉えることの効用に、後手に回ったり、後れを取ったりしなくなるということがあります。チャンスというものは、空間的に小さく、時間的に一瞬に訪れます。ピンポイント且つタイトにやって来るが勝機なのです。

従って、後れを取らないよう意識することがとても大事であり、勝機を見逃さないための心得が「節目」に込められているというわけです。

それから「険しさ」も忘れてはいけません。「戦いの上手な者は、その勢いを険しくし」とありますが、「険」は山の尖った稜線のことです。矢であれば、その勢いを尖った先端に集めよということであり、運動エネルギー即ち「勢い」が鏃(やじり)の一点に集中されれば、そこが突破口となって勝機(しょうき)を切り開くことになるのです。

兎に角、威力を分散させないことが大切です。勢いがあるかどうか、節目を捉えているかどうか、一点に集中させているかどうか。これから世に打って出るときや活動をブレイクさせるべきときなどに、これらをよくチェックしてみてください。

また武道も同様で、とりわけ空手道には勢いが求められます。突きや蹴りの際、速さと攻撃箇所への一点集中が威力をつくることになります。

先に、運動エネルギーは物体の質量に比例し、速度の二乗に比例すると述べました。重さが倍になればエネルギーも2倍になるのに対し、速さが倍になればエネルギーは4倍になると。そこに、さらに攻撃ポイントへの一点集中が加われば、威力は格段に増すという次第です。

速さと勢い、集中と威力といった事柄を、物理学などが無かった時代にも関わらず、孫子が的確に掴んでいたことに感心させられます。(続く)