その50 氣を通してトドメを刺し、相手を圧倒する!

威力は質量よりも速度で増すのだから、スピードを付けて一点を攻めれば勝機を掴むことが出来るということを述べました。そこに、もう一つ加えたいことがあります。それは「氣(気)」を出すということです。

「氣」は「米」と「气」が合わさった漢字で、ご飯(米)を炊くときに上がる湯氣(气)を表しています。湯氣は透けて見える捉え難い存在ですが、蒸気となって重たい蓋を持ち上げてしまう力があります。だから、明らかなエネルギーであることに間違いありません。

この「氣」というものが世界を構成する基本的要素であり、氣が集まれば物質化し、拡散すれば空気や大気となると。この考え方を「氣一元論」と言い、中国人の世界観となっております。

日本人の場合、「氣にするな」とか「氣のせいだよ」などというように、氣という漢字をハッキリしないものを表すときに用いています。氣を実在するモノと捉えている中国的世界観とは、随分違う観方であることが分かります。氣は中国人の考え方の通り、明確なエネルギーを指しています。これを出すのと出さないのとでは、何事であれ結果が全然違ってきます。

よく「氣で倒す」などと表現することがありますが、それは「氣力を出せ!」というような観念的な精神論とは違います。実際に氣を出すことによって、相手を圧倒することはよくある話なのです。

そういうことから、「氣を集中させる」ということを「勢いを険しくし、節目を一瞬に集中させる」ために付け加えたいと思います。勢いを一点に集中させて威力を高める上で、氣の力も活かそうということです。

では氣を出すにはどうしたいいかというと、まず「氣というものがある」と意識せねばなりません。氣というものがあると意識しながら、体操や呼吸法に合わせて氣を天空や大地から吸収するのです。

そして、肩の力を抜いて重心を下げ、吸収した氣を丹田(ヘソの下辺り)に集中(統一)させます。その上で、氣が手や全身から放射されるイメージを持ちましょう。武道やスポーツでは、氣を出す際に氣合いや掛け声を使うと上手くいきます。裂帛の氣合いによって迫力が現れ、大きな掛け声で勢いが増すというわけです。

また、武道であれ、仕事であれ、何であれ、トドメを刺すということが重要とされています。合氣道では、相手を投げると同時に氣を抜くのではなく、受け身を取る相手に向かって氣を通すことが求められます。それを残心と言います。

物理的には、相手が離れてしまえば、それでお終(しま)いなのですが、残心で氣を通すことによって技の掛かり方が全然違ってきます。仕事の上で心を込めるというのも、実は残心によって氣を通しているということなのです。(続く)