その72 相変わらず、陣取り合戦に明け暮れているのが世界の現実

それでは『孫子』虚実篇その六の解説をします。戦いの場所と戦いの日をこちらが決めることで、如何にして主導権を握るかがその主題であり、「知るべき」ポイントは次の4点です。

(1)「利害得失の計」…戦いの利害損得を計算すること。敵情を分析し、敵味方の優劣を計る。そうして、戦うべきかどうかを決める基準とする。

(2)「動静の理」…敵軍の動き方や静まり方の基準を知ること。頻繁且つ定期的に侵入行為や誘い掛けの工作をしてみて、敵の出方や動き具合を探る。どの程度まで迫ったときに、どんな動きが起こるか。また、どの程度までなら、反応することなく静かにしているかを確かめる。反応はデータ化し、その変化を分析し、敵の反応が鈍くなったときが攻め時となる。

(3)「死生の地」…戦闘における死地(地形上の不利な場所)と生地(地形上の有利な場所)を掴むこと。こちらに対して応戦態勢を取らせてみて実情を把握し、その固定化されたパターンから死地と生地を見分ける。

(4)「有余不足の処」…敵陣の有余(優勢なところ)と不足(手薄なところ)を知ること。小競り合いを起こさせ、偵察行動によって充実したところと虚弱なところを探る。

以上が、孫子の教える主導権を握る際のポイントです。これらを知ると、笑顔で握手を求めているにも関わらず、背後で抜け目なく侵犯・侵入を仕掛けて来る理由がよく分かってまいります。

こちらが譲歩すれば、そこまで相手は侵入して来ます。譲り合いや助け合いの行為すら、必ずしも善意で行われるものではなく、一つの取引であるか、敵情を分析するための偵察行動の一環となっています。それが外交の実態であり、食うか食われるかの中で、相変わらず陣取り合戦に明け暮れているのが世界の現実というわけです。(続く)