その79 孫子の兵法~「紆直の計」で回り道を近道に変えよ!

いかにして先手を取るか。機先を制するための争いを「軍争」と言い、その心得を教えているのが「軍争篇」です。

《孫子・軍争篇その一》
「孫子は語った。およそ用兵の手順は、将軍が命令を君主から受け、軍を統合して兵を集め、両軍が相対して布陣するのだが、そこから両軍が交争することほど難しいものは無い。

両軍が交争することの難しさは、迂回を直行と為し、患難を有利と為すところにある。そこで、その道を迂回しながら、相手を利益で誘い、人より後れて出発しながら、人より先に着くのだ。これが「迂直(うちょく)の計」を知る者(の方法)である。」

※原文のキーワード
用兵の手順…「用兵之法」、将軍が命令を君主から受ける…「将受命於君」、軍を統合…「合軍」、兵を集める…「聚衆」、両軍が相対して布陣…「交和而舎」、両軍が交争する…「軍争」、難しいものは無い…「莫難」、迂回…「迂」、直行…「直」、患難…「患」、有利…「利」、その道…「其途」、相手を利で誘う…「誘之以利」、人より後れて出発…「後人発」、人より先に着く…「先人至」

戦争の段取りは、君主が出陣命令を出し、それを将軍が受けるところから始まります。将軍は、軍を起こして統合し、そこに兵士を集めます。やがて戦地で「両軍が相対して布陣」し交争となりますが、先手を取る(機先を制する)ための駆け引きくらい難しいものはありません。

その難しさは「迂回を直行」、則ち回り道を近道に変えるところにあり、「患難」則ち回り道を取るという不利な状況から、妨害を受けずに有利に転じていくところにあるのです。

ではどうするかというと、迂回ルートを進む一方で、別の地点で相手に手柄を立てさせるなどして、「利益で誘」って時間稼ぎをします。そうすれば「人より後れて出発しながら、人より先に着いてしまう」のです。

そうして、相手はこちらの動きを読み切れず、回り道をしていることに油断し、しかも利で釣られて慢心し、動きが鈍くなっています。やがてこちらは前線に先に着き、後れて到着した敵に、一気に攻めていくことが出来ます。これが「迂直の計」であり、遠い道を近道に変えてしまうことから「遠近の計」とも言います。(続く)