その82 補給部隊を研究していくと、勝敗の要因がより鮮明に分かってくる

集団で活動する場合、全体が一個の生命体のようにまとまる必要があります。戦闘なら尚更で、全軍が単なる個人の寄せ集めというのでは全然ダメです。しっかりした活動体にならないと、個々の兵士は優れているのに、全体的に見たら少しも勝っていないという事態に陥ります。

特に、休息と補給の重要性が分かっていない組織は最悪です。スポーツ競技で考えれば、延長戦があったとしても時間制限があり、試合が終われば両軍とも引き上げて、後は宿舎に戻って休息と栄養補給に専念出来ます。それによって、また次戦に臨めます。

ところが、戦争はいつ始まり、いつ終わるのか分かりません。戦場はあっても、ファウルになる「場外」などというものは無く、戦闘の場所自体がどんどん移動します。

そういう中で重要となるのが休息と補給ですが、軍隊にはスポーツ選手に用意されているようなホテルやレストランはありません。何千何万人という兵士が、野営・駐屯しつつ戦争を続けます。

莫大な分量の物資や食材、調理具や燃料を運びながら移動し、その都度設営し直さなければなりません。そうやって進み行くのが軍隊なのですから、そもそも個人の動きで対応出来るようなものとは違うのです。それで、集団としてまとまっていないと勝てないということになるわけです。

さて、現代の会社や社会団体の活動においても、組織全体で動く際に、それぞれの進度を揃えようとすると、どうしても動きが遅くなります。そうかといって個々に自由に動けば、一見速いようでも先方と後方が分離していき、いろいろなロスも生じ、結局滞ることになりかねません。

企業活動で、新しく工場を建てたり店を出したりする場合も同じです。機先を制して有利な地を取らねばならないものの、補給が不十分なまま先走りすると空中分解します。手元資金、人員、原料や部品、商品などが十分に調達されなければ、たちまち勢いが途絶えてしまうのです。

こうして軍争篇・その二では、輜重隊や兵站部を軽視しないよう戒めました。戦争シーンのある映画やドラマを見るときや、歴史探究で古戦場を訪ねるようなときは、派手な戦闘場面にばかり目を奪われているようではいけません。その大軍を支えた補給部隊と担当した武将についても意識しながら研究していくと、勝敗の要因がより鮮明に分かってくるのではないでしょうか。(続く)