その90 相手の充実度を、どうやって見抜くか?

戦う前に勝つための4つの基本として、自軍の「士氣」を高めることと「心理」を静めることの必要性について述べました。後の二つは「活力」と「応変」です。

「活力」は兵士の体力のことで、その充実は敵よりも早く戦場に到着し、有利な地に布陣することによって得られます。味方は「安楽な状態」に身を置き、移動で疲れた体力を回復させられます。ところが敵は、後れて来るので疲労したままであり、布陣も不利とならざるを得ません。

また、味方は「腹一杯食べた状態で飢えた敵を待つ」ことが出来ます。到着したばかりの敵は、食事の支度もままなりません。こうして、こちらの活力を高める一方、相手の活力を削いでいくのが「力を治めるということ」の意味となります。

それから「応変」は、相手の実力に応じた戦い方の変化のことで、その度合いを測る基準は敵陣の構えにあります。敵の陣容がどっしりと安定していて、同時に機動力に満ちていれば実力十分と判断されます。

相手の実力を見抜くポイントですが、それは「旌旗が整然と翻っている」かどうかにあります。旗や幟がよく揃っており、勢い良く真っ直ぐ立っている。部隊の動きに合わせて旌旗が機敏に移動し、旗や幟そのものから氣力が湧き上がっている、という状態なら充実度はかなり高いということになります。

ところが、力無く斜めになっている旌旗が多く、動きもバラバラという場合は、兵士に疲れが溜まっている可能性があります。旗の持ち方や掲げ方一つで、兵士の疲労度が読めるというわけです。今日の選挙でも幟旗を多用しますが、案外その翻り方によって、既に勝敗が決まっているのかも知れません。

そこで、敵の「旌旗が整然と翻っている」ときは、「要撃」則ち敵を待ち伏せて攻撃してはなりません。また、その「堂々とした陣容の敵を」真っ向から攻撃してもなりません。こうして、相手に応じて戦い方を変えるのが「変を治めるということ」です。

構えといえば、武道でも構えや立ち方を見た瞬間、相手の力量が分かるものです。上級者の構えはとても美しく、丹田によく全身がまとまっており、余分な力が抜けた自然体となっています。動けば中心線にブレが無く、充実した勢いが先へと伸びていきます。そういう相手と相対すには、こちらも相当稽古を積んでおかねばならないでしょう。(続く)