その93 わざと逃げる敵兵や、おとりの敵兵に要注意!

陣を構える場合、こちらが高地を取って低地の敵に向かうべし。逆に、高地に敵が陣取っている場合は攻撃してはならないという原則の補足を述べます。

こちらが高地を確保すれば、兵士に勢いが付くばかりでなく、矢を射たり投石したりする際、物理的に有利となってより遠くまで攻められます。

また、確保した丘を背にし、そこに陣取れば、背後の心配が無くなり、集中して前へ進めます。見晴らしも良好だから、敵軍の動きを的確に捉えることが出来ます。

そうして、布陣による形勢から勝敗が左右されていくのですが、もしも敵軍が先に戦地に到着していて、高地を取られてしまった場合はどうしたらいいのでしょうか。そのときは、基本的に正面から攻撃してはなりません。側方から不意を突き、少しでも平たい土地に敵をおびき寄せるなどして、高低差のある場所での真っ向勝負を避けるのです。

続いて、孫子は「隔絶した敵地に留まってはならない」と教えます。本国から隔絶した遠地、絶壁に覆われ人里離れた絶境の地などに、長く留まってはならないと。そういう土地は状態(地理)が分かり難く、水や薪の確保も大変ですから、敵と長く対峙してはなりません。

それから、「わざと逃げる敵を追ってはならない」という原則について。それは、こちらを誘い出すための偽りの退却です。それを深追いすれば、敵の思う壺となって深手を負うことになるでしょう。

また「精鋭な敵を攻めてはならない」という原則は、繰り返し注意されてきた当然の心得です。人間心理に人に乗せられ易いという一面があり、敵の盛んな勢いに接しますと、それに触発されてうっかり攻めてしまうことが往々にしてあります。それで、ここでも注意事項に入れたのだと拝察します。

6番目は「おとりの敵兵に食い付いてはならない」という原則です。「おとりの兵」は、こちらを釣るための餌の兵です。これに飛びつけば、待ち構えている強大な敵と戦うことになりますから、決して食い付いてはなりません。(続く)