その95 絶体絶命の地では、死中に活を求めて奮戦するしかない!

臨機応変の「用兵の原則」である九変に続いて、孫子はさらに以下の5点について説明します。これらは、九変の補足ともなっています。

《孫子・九変篇その二》
「用兵の原則として、将軍は君主の命令を受けて軍隊を編成する。だが、険しくて車が通り難い地には駐屯してはならない。四面から敵が集まる地では外交交渉に努めよ。隔絶した敵地には長く留まってはならない。敵に囲まれた地では謀(はかりごと)を用いよ。絶体絶命の地では思い切って戦え。

そういうことから、道に通ってはならない場合があり、敵軍に撃ってはならない場合があり、敵城に攻めてはならない場合があり、土地に奪い合ってはならない場合があり、君命に受けてはならない場合があるのだ。」

※原文のキーワード
君主の命令を受ける…「受命於君」、軍隊を編成…「合軍聚衆」、険しくて車が通り難い地…「※(土へん+己)地(ひち)」、駐屯…「舎」、四面から敵が集まる地…「衢地(くち)」、外交交渉に努める…「交合」、隔絶した敵地…「絶地」、長く留まってはならない…「無留」、敵に囲まれた地…「囲地」、絶体絶命の地…「死地」、思い切って戦え…「戦」、道…「塗」、通ってはならない場合がある…「有所不由」、撃ってはならない場合がある…「有所不撃」、攻めてはならない場合がある…「有所不攻」、奪い合ってはならない場合がある…「有所不争」、受けてはならない場合がある…「有所不受」

君主の命令を受けて、将軍は軍隊を編成し戦場に向かいます。しかし、戦場では次の事に留意が必要です。

第一に、人が通るのがやっとで、車馬の通れないような行軍の困難な土地に、軍隊を駐屯させてはなりません。移動し辛い土地だから、補給路が分断される可能性もあります。

第二に、諸国の勢力が集中する土地では、戦いを避けて専ら外交交渉に努めるべきです。利害関係が複雑に入り組み、一体どの国が敵で、どの国が味方なのかが分かり難い状況にあるのですから、ここは外交交渉によって利を図るのが得策です。

第三に、「隔絶した敵地には長く留まっては」なりません。本国から隔絶した遠地は、状況や地理が掴みにくいので、そこで長く敵と対峙するのは極めて危険です。なお、この第三の項目は、九変篇その一と重複しております。

第四は、「敵に囲まれた地では謀を用いよ」と。回りを敵に囲まれている以上、真っ向から戦いを挑んでも勝ち目はありません。そこで、敵情を的確に探りつつ、巧みに謀を巡らせます。こちらから出す情報は、真偽を織り交ぜて本心を分かり難くします。敵将を取り込んでは分断を計り、勝てるチャンスを辛抱強く待つのです。

そして第五が、「絶体絶命の地では思い切って戦え」です。絶体絶命の地を「死地」と言います。もう奮戦する以外に何ら方法が無くなったら、死を覚悟し、腹を据えて戦うのみです。そうすれば「死中に活を求める」ということも起こり得ます。(続く)