その97 九変の術を知らない将軍は危うい!

刻一刻と動いている状況に対し、着実に勝利のポジションを得られるよう、臨機応変に部隊を動かさねばなりません。そのための用兵の原則が「九変」であり、その補足に五原則がありました。

そこで、九変をもう一度おさらいしておきます。
一 高い陵(おか)にいる敵に向かってはならない。
二 丘を背にした敵を迎えてはならない。
三 隔絶した敵地に留まってはならない。
四 わざと逃げる敵を追ってはならない。
五 精鋭な敵を攻めてはならない。
六 おとりの敵兵に食い付いてはならない。
七 母国に帰ろうとしている敵を留めさせてはならない。
八 敵を囲む場合は完全包囲してはならない。
九 窮地に陥った敵に迫ってはならない。

それから、五原則も再掲します。これを「五利」と呼びます。
一 険しくて車が通り難い地には駐屯してはならない。
二 四面から敵が集まる地では外交交渉に努めよ。
三 隔絶した敵地には長く留まってはならない。※九変の三と重複
四 敵に囲まれた地では謀(はかりごと)を用いよ。
五 絶体絶命の地では思い切って戦え。

そうして、孫子は九変を知ることの重要性を、トドメを刺すかのように説きます。

《孫子・九変篇その三》
「(臨機応変による用兵の原則である)九変の利益に精通する将軍は、兵の用い方を知っている。九変による利益に精通していない将軍は、地形を知っていたとしても、地の利を得ることは不可能だ。兵を治めるに当たって九変の術を知らなければ、五利(九変の補足としての五原則)を知っていたとしても、人を用いることの体得は不可能だ。」

※原文のキーワード
九変の利益…「九変之利」、精通する…「通」、将軍…「将」、兵の用い方…「用兵」、精通していない…「不通」、知っていたとしても…「雖知」、地の利を得ることは不可能…「不能得地之利」、兵を治めるに当たって…「治兵」、人を用いることの体得は不可能…「不能得人之用」 (続く)