その99 損害の中から希望を見出し、転んでもただでは起きない!

我々の意識というものは、どうしても一方に偏ります。少し調子に乗ると、どこまでも利益が膨らむことを夢見、一部分でも巧くいかなくなると、このまま損害が出て終わってしまうのではないかと気落ちします。

指導者が、そんな単純な思考に留まっているようではいけません。プラス面とマイナス面、則ち利益と損害(被害や害悪)の両方を普段から意識することが必要です。どちらか一面だけを見てよしとするのではなく、常に全体を観るよう心掛けるのです。

利害の両方を考えるというのは、利益の中に損害を見、損害の中に利益を見るということです。そもそも、利益のみということは無いし、損害だけということもありません。まさに陰中陽有り・陽中陰有りと同じで、利の中に害が伴い、害の中に利が潜むというのが自然の姿なのです。

そこで、次のような心得を持つことをお勧めします。利益が出ているときは、利益の中に伴う損害を予(あらかじ)め予想し、それが大きくならないよう先手を打つ。損害が生じたときは、被害の中に潜む利益を発見し、それを伸ばすよう仕組んでいくと。

利益に浮かれている内に全てを失い、損害に落胆している内に全てがダメになってしまうのが世の常です。損害の中からも希望を見出し、勇気を湧き起こすところに、不撓不屈の指導者の生き様があります。そういう在り方を、諺では「転んでもただでは起きない」といいます。

《孫子・九変篇その四》
「智者の思慮は、必ず利と害をまじえている。利に(害を)まじえれば務めはマコト(信実)となり、害に(利を)まじえれば心配は解くことが出来る。

こうして、敵の諸国を屈服させるには害を与え、敵の諸国を使役(で疲れ)させるには事業を仕掛け、敵の諸国を(こちらに)趨(はし)らせるには利で仕向けるのである。」

※原文のキーワード
思慮…「慮」、まじえる…「雑」、マコト(信実)となる…「可信」、心配は解くことが出来る…「患可解」、敵の諸国…「諸侯」、害を与える…「以害」、使役…「役」、事業を仕掛ける…「以業」、利で仕向ける…「以利」(続く)