その101 アメはエサに過ぎず、相手の狙いはムチに潜んでいる…

「智者の思慮は、必ず利と害をまじえている」という考え方は、味方が有利になるよう誘導する際にも用いられます。次のように、敵に対して利と害をまじえつつ巧みに仕掛けるのです。

・敵の諸国を屈服させるには害を与える。
・敵の諸国を使役し、疲れさせるには事業を仕掛ける。
・敵の諸国を(こちらに)趨(はし)らせるには利で仕向ける。

そもそも屈服とは、相手の勢いに押されて恐れが生じ、抵抗する気持ちを失った状態のことです。そうさせるには、言うまでもなく実害を与えることが一番有効な方法です。

その一つに、敵に労役を課すというやり方があります。何らかの事業を起こし、それに関わらせ、途中からあれこれ難癖を付けては休ませることなく使役し、すっかり疲労感に覆われた状態に追い込んでいくのです。

そのきっかけは、甘い言葉で誘い掛け、利で釣るところから始まります。しかし、それは蟻地獄へ転落する第一歩に他なりません。

現代も、経済力の強い大国が途上国に対して利をちらつかせ、無謀とも言える開発事業に参加させるものの、貸し付けた資金が返済不能となるやいなや、たちまち権益を取り込んで来るといった横暴な事態が頻繁に起きています。

利益と損害、これらはアメ(飴)とムチ(鞭)に置き換えることが出来ます。アメの中にムチが隠され、ムチは常にアメにくるまれています。アメはエサ(餌)に過ぎず、相手の狙い(目標)はムチに潜んでいるのですから、まさに二者は表裏一体の関係にあります。そういうことから、利益で誘い掛けて来る言葉巧みな相手ほど、よくよく慎重に対応せねばなりません。(続く)