No.11 戦争で“馬の人生”まで変わってしまう

それぞれ得意とする分野で役立ち合おう

「気は優しくて力持ち」というのは、自分が持っている力を、他人のために生かせる人のことです。もしも財産家なら、財力で社会に奉仕する。知性に秀でた文化人であれば、知恵を生かして人を助ける。困っている人を助け、それで喜ばれることが、自分の喜びにもつながるという人たちです。

誰でも、得意とする分野が何かあるものです。自分にしか出来ない役割を見出し、それを伸ばして役立ち合いましょう。その結果、弱者が守られるのが互恵社会です。では、第四十六章の解説に入ります。

《老子・第四十六章》
「天下に道があれば、早馬は追いやられて耕作に働くことになり、天下に道が無ければ、軍馬が近郊に繁殖する。

禍(わざわい)は足るを知らないほど大きいものはなく、咎(とが)は欲得ほど大きいものはない。だから、足るを知ることによる充足は、常に満ち足りていることになるのだ。」

※原文のキーワード
早馬…「走馬」、追いやられる…「卻」、耕作に働く…「糞」、軍馬…「戎馬」、近郊…「郊」、繁殖…「生」、充足…「足」、満ち足りる…「足」

牝馬まで軍馬に駆り出され、仔馬が繁殖する

「天下に道があれば」というのは、世の中に無為自然の道が生かされていることを意味しています。無理な競い合いや、無駄な闘いが無く、お互い自然体で生きている様子です。国同士であれば、戦争の無い平和な政治が行われている状態のことです。

そういうときは、緊急事態が起こらないから、伝令に使う早馬が不要になります。早馬は追いやられて、耕作に働くことになります。耕作の原文の「糞」は、田畑に撒く肥料のことで、農耕作業を表しています。

ところが、天下に道が行われていませんと、軍馬が都市近郊(城壁の周辺)に繁殖することになります。戦争で、農耕などに使われていた牝馬(ひんば、メスの馬)まで駆り出されてしまい、牡馬(ぼば、オスの馬)と交わることで仔馬が誕生するのです。なお、「郊」を郊外の意に取って、戦場となる郊外の田野に仔馬が繁殖するという解釈もあります。(続く)