その106 地形を知り、それに応じて布陣し、軍隊を進める

まず地形を知り、それに応じて布陣し、軍隊を進める。この当たり前のことが出来てこそ、敵の実情を観察する余裕も生まれます。その重要な注意点や視点が、「行軍篇」に示されています。

《孫子・行軍篇その一》
「軍隊の居る場所の注意点と、敵軍を観察するときの視点について、孫子が言った。

山を越すときは谷に沿って進め。高みを見付けては高地に陣取れ。高い所では、登りながら戦ってはならない。これらが山に居る軍隊の注意点だ。

川を渡ったときは必ず水から遠ざかれ。敵が川を越えて攻めて来たときは、それを川の中で迎え撃ってはならず、半分渡らせてから撃つのが有利である。戦おうとするときは、川のほとりで敵を迎えてはならない。高みを見付けて高所に居り、(下流にいて)水流を迎えることがあってはならない。
これが川に居る軍隊の注意点だ。

沼沢地を過ぎるときは、ひたすら早く通り過ぎるべきで、留まることがあってはならない。もしも沼沢地で交戦した場合は、水草に沿いつつ木々を背後にせよ。これが沼沢地に居る軍隊の注意点だ。

平地では動き易い場所に居れ。高地を右後ろ側にせよ。低地を前、高地を後ろにするのが、平地に居る軍隊の注意点だ。

およそ、これら四つの軍隊の利益が、黄帝が四帝に勝利した理由である。」

※原文のキーワード
軍隊の居る場所…「処軍」、敵軍を観察…「相敵」、山を越す…「絶山」、谷に沿って進め…「依谷」、高みを見付けては高地に陣取れ…「視生処高」、高い所では、登りながら戦ってはならない…「戦隆無登」、これらが山に居る軍隊の注意点だ…「此処山之軍也」、川を渡ったときは必ず水から遠ざかれ…「絶水必遠水」、敵が川を越えて攻めて来たときは、それを川の中で迎え撃ってはならず…「客絶水而来、勿迎之於水内」、半分渡らせてから撃つのが有利である…「令半済而撃之利」、戦おうとするときは…「欲戦者」、川のほとりで敵を迎えてはならない…「無附於水而迎客」、高みを見付けて高所に居り…「視生処高」、水流を迎えることがあってはならない…「無迎水流」、これが川に居る軍隊の注意点だ…「此処水上之軍也」、沼沢地を過ぎるときは、ひたすら早く通り過ぎるべきで、留まることがあってはならない…「絶斥沢、惟亟去無留」、もしも沼沢地で交戦した場合は、水草に沿いつつ木々を背後にせよ…「若交軍於斥沢之中、必依水草、而背衆樹」、これが沼沢地に居る軍隊の注意点だ…「此処斥沢之軍也」、平地では動き易い場所に居れ…「平陸処易」、高地を右後ろ側にせよ…「右背高」、低地を前、高地を後ろにするのが、平地に居る軍隊の注意点だ…「前死後生、此処平陸之軍也」、およそ、これら四つの軍隊の利益が、黄帝が四帝に勝利した理由である…「凡此四軍之利、黄帝之所以勝四帝也」(続く)