No.35 多様なもの満たされていることが進化の証

「善」や「正義」の意味とは

ところで、善悪の「善」、正義の「正」や「義」には、漢字の語源としてどんな意味があるのでしょうか。

「善」は「羊」と「言言」の合字です。「羊」が付く漢字には、善いとか美しいといった意味があります。「羊」はその性格が温順で、善く群がり整って進んで行くからです。

「善」の下半分の「言言」は、言葉や問答のことです。美しくて正しい言葉をやり取りするのが「善」であり、そこから広く「よい」という意味を持つようになりました。「美」も「羊」+「大」です。これは大きく肥えた羊のことですが、「よい」「美味しい」「美しい」という意味を表しています。

正義の「正」は、音を示す「丁(テイ→セイ)」と、歩く意の「止」が組み合わさった文字で、真っ直ぐ歩くことを意味しています。または、「一」を守って「止まる」という、実直な様子が正であるという解釈もあります。いずれにせよ、その真っ直ぐな姿勢が正の意味となります。

「義」はどうかといいますと、これも漢字の上半分が「羊」で、美しく整った様子、筋の通った正しさを意味しています(下半分の「我」はガ→ギという音)。

筋の通った生き方や考え方が基本

まさに正義とは、真っ直ぐな道であり、筋の整った正しさという意味の熟語です。人生であれば、折れることなく真っ直ぐ筋を通していくのが正義の生き方です。それは、私心や私欲を捨てられることが前提であり、名利に囚われることのない「魂の高貴さ」が無ければ、決して貫けない生き方です。

こうして善も正義も、筋の通った生き方や考え方が基本になっています。その正義の基準として、道理からすると筋が通っているのはどちらか、どちらが正しく、より必要かといったことの考察が重要になります。

それを明らかにするために、常に全体を観ることの必要性を述べてきました。部分観に陥って狭苦しい考え方に迷い込んだのでは、善も正義も逸れていってしまい、対立を煽るだけとなります。そうならないよう、空間的にも時間的にも全体観を働かせて欲しいというわけです。

宇宙進化の三つの尺度

さて、先に結論として、大きく言えば宇宙の進化に叶うことであれば善、宇宙の進化を妨げることであれば悪であると述べました。宇宙の進化とは何かと問われれば、次の三つの要素が尺度として不可欠になると思います。

一つ目は多様化です。環境への適応性や生存能力を高めるためには、一つのタイプに偏らないで、多様なものに満たされるということが必須の要件になります。野生の麦は、背丈の高いものから低いものまで、多くの種類が共存していたそうです。

高いものは洪水になっても、その上に穂を出して生き残ることができ、低いものは大風が吹いても、重心が低いから倒されにくいという特徴があります。そうして、麦全体として生き残る可能性を高くしているのです。

あるいは、蛹(さなぎ)の一部が、一ヶ月ほど後れて羽化するようになっている蝶があるそうです。一斉に羽化し、そこに台風でも来たら、その蝶はたちまち全滅です。それを避けるために、羽化をずらすことでリスク分散をしているのです。

いろいろな環境変化に対して、仲間の誰かが危機に対応することで、全体として生き残っていく。そのために多様性が育まれてきたのであり、より多様なものに満たされていることが、自然界はもとより人間社会にあっても、進化の証ではないかと思う次第です。(続く)