No.70 重心を下げて生きていけば安定していられる

共通の原理を掴めば全体が分かってくる

東洋思想の基本に、全てにつながる原理を認め、これを直覚的に掴もうとする考え方があります。そもそもこの世界には、あらゆる物を生かしている根元的な働きがあり、その「共通の原理」を捉えさえすれば全てが分かると考えたのです。

その「共通の原理」を、老子は「一(いち)」で表しました。あらゆる物の最初を示す一です。

最初に戻るということ。すなわち一に帰れば何でも見えてくるし、一に則れば全てが分かるようになると老子は教えます。

「一」 は中心や根本の一であり、大局や全局の元になる一でもあります。
根元であると同時に全体を掴むための一なのです。

この一を捉えるところに、中国思想や仏教思想をはじめとする東洋思想の基本があります。勿論、日本思想も同じです。

根元から外れなければ、全体を失うことがない

根元と全体、これらは別物ではありません。根元が活動して拡大化したときに全体となるのです。社長というという根元が活動すれば、事業や会社という全体が成立するのと一緒です。

つまり、根元や中心の働きの及ぶ範囲が、全体や全局ということになるのです。

この東洋思想の全体観に対して、西洋思想ではシンプルロケーションが基本となっています。物事を捉える際に、対象を部分化、単純化、局在化、専門家していきます。これが、近代科学を成り立たせました。西洋思想が個々の分析へと向かうのに対して、東洋思想は根元と全体の直覚から入るのであり、そこには対照的な違いがあったというわけです。

根元から外れなければ、全体を失うことがありません。そして、倒れることも滅びることもありません。そのためには、身を低くして生きていけばいいと老子は諭します。根元は低いところに位置しているので、人間も重心を下げて生きていけば安定していられるという考え方です。それらのことを教えている第三十九章を学んでまいりましょう。(続く)