No.74 トップを、どう補佐するか

前号で【経営の原理原則・第二条】と書きましたが、正しくは【第三条】でした。謹んで訂正致します。

経営者は、船長のような存在

トップは孤独な存在です。重い責任を背負う中、逃げないで毎日踏ん張っています。部下には部下の言い分があることは承知の上で、トップを補佐する立場の皆さんに「もっと社長を知って下さい」と言いたいのです。

経営者は、船長のような存在だと思います。かつて法律(船員法)で、船長には最後に退船する義務が課せられていたそうです。事故などの際、逃げないで船と共に海に沈むことも、少なからずあったようです。

多くの経営者は、会社という船と運命を共にしています。不況で苦しくても、会社を続けていけば、いつかきっと良くなる。そう信じつつ、船と運命を共にしているのです。

最終責任者である経営者は、淋しい思いをしていることが多いものです。必死になってお金を工面し、社員に喜んで貰いたくて給料を支払っているのに、社員はただ受け取るだけ。働いた分を貰うのだから、社員にしてみれば、それは当然のことです。でも経営者としては、給料を用意する苦労に少しは気付いてくれたらなという、どこかやるせない気分があるのです。

本当に社長は、船から逃げられない立場にいます。社員ならば仕事が嫌になったら辞めることが出来ますが、社長はそうはいきません。辞めるときは倒産するときになってしまうケースが少なからずあります。しかも、多額の借金を背負い、関係者から罵声を浴びせかけられて去っていくのですから大変です。

トップの欠点を、どう補うかを考えよ

先に、欠点を含めてトップを好きになれるかどうかを尋ねました。これに頷いて頂けるなら、今度は、そのトップの欠点をどう補うかを考えてみて下さい。

社長が研究開発タイプの場合、良い商品は出来たが、宣伝・販売を全く考えていなかったという事態に陥ることがあります。そういうトップには、有能な営業本部長が付いていないと、折角開発した商品やサービスが少しも売れません。

お金を湯水の如く使ってしまう恐れのある社長ならば、経理担当者がしっかりと財布の紐を締めてかからねば大変です。社長の言う通りにしていたら、たちまち大赤字となってしまうでしょう。

どんぶり勘定のトップの欠点を補う側近は、単なる会計業務担当者とは全然違います。赤字を出さないよう管理しつつ、事業経営の全体観から、お金を生かしていけるよう財務計画を立てる必要があるのです。

社長だけは分かってくれている、という一点が支え

また、トップが部下に甘いか厳しいか。それによって、補い方が違ってきます。
トップが温厚だが厳しさに欠け、「切る」ことが苦手な場合は、ナンバー2やそれに準ずる側近が嫌われ役に就かねばなりません。

反対に、トップが部下を厳しく責め立てる「相撲部屋の親方タイプ」ならば、側近の中に社員をホッとさせる「相撲部屋の女将さんタイプ」がいて、トップの厳しさを中和させる必要があります。「社長が激しく怒るときは、見込みがあると感じたときだけから、落ち込まないで自信を持つように」などとフォローするのです。

嫌われ役や切る役のほうは、仲間から怨まれることを承知で務めなければならない損な役回りです。この辛い役目を担当出来るのは、何らかの心の支えがあるからです。

それは、自分はトップから特別に信頼されており、社長には自分の気持ちを分かって貰えているという絆です。会社の皆が自分のことをよく思わなくても、社長だけは分かってくれている。そういう一点、ただ一筋のつながりによって、非情にもなれるわけです。

だからトップは、嫌われ役の部下に、殊の外目を掛けてやらねばなりません。
そうでなければ報われないで終わってしまいます。

それからもう一つ。地味なトップのカリスマ性を、高めるよう補佐するのも側近の仕事です。社員が感心・感動する「社長のエピソード」を見つけ、それを周囲に話し、社長の伝説や物語を起こすのです。それが、トップの器量を助けることにつながります。(続く)