No.78 理念を作った本人(経営者)が、まず理念を守ること

自由の意味は、何やっても勝手ということか…

「言葉の定義を明確にさせよう」ということの解説の続きです。例をもう一つ。
行動指針に「自主性を持って事にあたります」という言葉があったとします。
これを、どう解釈するかです。

自主性の「自主」を、「自ら主体となる」意味の自主に理解してくれたらマルです。そうではなく、「何をやっても自分の勝手だ」と受け止められたら、社長が言いたかった本意からすっかり反れてしまうことになります。身勝手な解釈となるのですから、指針を唱えれば唱えるほど、自己本位な社員が育ってしまう恐れが出てきます。

「自由」についての解釈の広がりを思い起こして下さい。抑圧された環境からの自由を求めるのは大切なことであり、独裁体制下で苦しんでいる人民の生活苦を思えば、自由の大切さはよく分かります。

ところが、「束縛を受けない」という意味が拡大解釈されていきますと、やがて勝手主義に進み、迷惑を掛けていなければ「何をしても構わない」という自由になります。あるいは、迷惑を掛けていようが「私の自由だから関係ない」というところにも行き着きかねません。そうなれば、本来の自由の意味である「自らに由る」という自主自立の精神とは、程遠いものになってしまいます。

理念は考え方の基本、指針は動き方の基本

経営理念と行動指針という二つの用語を出しましたので、この両者の関係について述べておきます。

理念は「考え方の基本」のことです。我が社の仕事は何か、仕事の意味とは何か、お客様に役立って喜ばれるとはどういうことか、我が社で働く意味とは何か、社員にどう成長して貰いたいか、全社一丸となってどこを目指していくのか、などについてまとめられたものが経営理念です。

そして行動指針は、理念に基づいて示されるところの「動き方の基本」になります。理念よりも具体的に、「どう動いて欲しいか」がまとめられています。行動指針は、一般的に「五訓」「五誓」といった形でまとめられていることが多いようです。「一、(ひとつ)○○の事」という表現です。

理念を作る際の際の、大切な注意事項がまだあります。作った本人が率先して理念を守るということがそれで、これが【経営の原理原則・第五条】の「理念や指針を、まず上の者が守っていること」になります。

松下幸之助翁は「社是、店訓を一旦つくったならば、店主自身がそれに従わなければならない」(『商売心得帖』PHP研究所)と教えました。理念を作るのは「理念策定準備会」任せ、完成したら今度は「理念推進委員会」に丸投げ。自分は社長だから理念を超越しており何ものにも縛られない、なんていう考え方では理念が定着しないのも当然でしょう。(続く)