旧文明、旧体制の崩れる音が聞こえるか

音を超えた音を聞け

まだまだ第四十一章が続きます。もう少し本章の「謎かけ」にお付き合い下さい。

「大きな音は微かな声だ」。大きな音なのに微(かすか)に聞こえるというのですが、これは一体どういうことでしょうか。

本当は大きな音なのに、なかなか聞こえてこない。実際は大きく響いているのに、普段は聞き逃している。「大音」とはそういう意味なのですが、それは「音を超えた音」ということにもなります。空気が振動して伝わる(通常の)音を超越した、もっと巨大な音です。

その例として、地球が自転する音や、歴史が大きく動くときの音があります。地球が自転すれば何らかの波動が生じているわけで、「微かな声」ながらも、聞こうとすればその“振動”を感じられるはずです。歴史が転換するときも、音にはならない音として、その変革のエネルギーを聞くことが出来ると思うのです。

「聞く」は、全身で察知することを意味している

「聞く」という言葉について解説を加えておきます。「キク」は、訓読みであり大和言葉です。大和言葉は一音一音に意味(音義)があり、聞くの「キ」は、きつい・厳しいのキで強いことを、「ク」は組む・括(くく)るのクで結合を表しています。すなわち「キク」とは、強く受け入れ、力強く一体となることを意味した日本語なのです。

しっかり働く意味の、薬が効く(キク)や腕が利く(キク)も、同根の言葉です。また、良し悪しを見るのも「聞く」であり、香りを聞く、酒を聞くなどと言います。目で鑑定すれば目利きとなります。このように耳ばかりでなく、鼻や舌、目でもって強く受け入れるのが「キク」なのです。

従って、音ではない音を聞くという姿勢は、迷信じみたおかしなことを言っているわけではないことになります。全身をセンサーに、第六感をも駆使して察知するのが「キク」の本来の意味なのですから。

幕末維新の志士とは、幕藩体制が崩れる音を、いち早く聞いてしまった者のことです。これから我々にも、いろいろな音が聞こえてくるでしょう。欧米中心文明から東西共生文明へ、世界文明が交代する音。右肩上がりでないと維持できないという、物欲膨張資本主義が崩れていく音など…。

政治の旧体制が壊れていく音ならば、既に多くの人が耳にするようになりました。重心を下げて全体観を養い、余分な力を抜いて我欲を少なくすれば、大切な音がいろいろ聞こえて来るに違いありません。(続く)