No.109 最も柔らかいものが、最も堅いものを動かす

水に学べ

老子が理想とする生き方は「水」に譬(たと)えられます。水は最も柔らかいのに、滴(しずく)が長い間に岩をへこませていくように、堅いものを突き通す力があります。また、どんなところにも入っていく浸透力があります。混迷の時代を生き抜くためのヒントが、そういう水の性質にありそうです。

《老子・第四十三章》
「天下で最も柔らかいものは、天下で最も堅いものを思い通りに動かす。形の無いものは、隙間の無いところに入っていく。そういうことから私は、無為が有益であることを知るのだ。不言の教えと、無為の有益さ。天下に、これらに及ぶものは希である。」

※原文のキーワード
最も柔らかいもの…「至柔」、最も堅いもの…「至堅」、思い通りに動かす…
「馳騁(ちてい)」、形のないもの…「無有」、隙間の無いところ…「無間」、
そういうことから…「是以」、私は…「吾」、有益さ…「益」、これらに及ぶ
…「及之」

柔軟な発想が伴ってこそ、筋の通った堅さが生きてくる

堅いものは、ただそのままでは、融通が利かず役に立ちません。柔らかいものが一緒になって働いてこそ、堅いものは生きてきます。

「天下で最も柔らかいもの」というのは、老子においては水です。「天下で最も堅いもの」の代表は岩石であり、水には硬い岩石を割る働きがあります。

大きな岩を割ろうとするとき、割ろうとする線上の、ところどころに穴を開けて木片を差し込みます。その木片に水を注ぎますと、木片は水の浸透力で膨張します。その広がる力で、岩石が割れるのです。

そういう働きを、原文では「馳騁(ちてい)」と表現しました。「馳」は走らせる、「騁」はほしいままという意味で、馳騁とは「思い通りに動かす」ことです。

我々の考え方も、堅いだけではすぐに行き詰まってしまいます。そこに柔軟な思考による馳騁を加えなければ、固定観念を打ち破ることは出来ません。柔軟な発想が伴ってこそ、筋の通った堅さが生きてくるのです。(続く)